危険物取扱者 甲種は、消防法で定められたすべての危険物を取り扱うことができる国家資格。
比較的簡単にとれる上、実務でも役に立つので受験を考えている人も多いと思う。
とはいえ、仕事が忙しくて勉強している余裕なんてない!という人が多いと思うから、この記事では私の実体験をもとに2か月でばちこり危険物取扱者 甲種に合格する方法を解説する。
具体的な勉強方法とか覚え方というよりは、勉強を始める前に知っておくだけで勉強の効率が上がるような内容を中心に解説したい。
【結論】1:4:5で勉強する
結論から言うと、危険物取扱者 甲種を2か月の独学で合格するためには、1:4:5で勉強するのがいい。
危険物取扱者 甲種には
- 物理学および化学
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法
- 危険物に関する法令
の3種類の単元があるんだけど、これらを1:4:5の割合で勉強するのが効率がいい。
「物理学および化学」は高校・大学の知識で解ける問題が多いから、ここに勉強時間をかけるのはもったいない。
2か月という短期間で合格しようと思ったら、「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」と「危険物に関する法令」に全力を注ぐべきなんだ。
もうひとつのコツはインプットとアウトプットを繰り返すこと。
暗記が多い危険物取扱者 甲種試験だけど、問題を何回も解くことで理解が深まるから、暗記一辺倒にならないように。
危険物取扱者 甲種の概要
まず簡単に危険物取扱者 甲種の概要を解説する。
試験科目・問題数・時間
試験科目・問題数は以下の通り。
危険物に関する法令 | 15問 |
物理学および化学 | 10問 |
危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法 | 20問 |
試験時間は3科目合わせて2時間30分で、各科目6割以上の正答率で合格となる。
危険物取扱者 甲種の出題形式
五択のマークシート方式。
危険物取扱者 甲種の合格率
合格率は例年40%前後。
平成30年度 | 39.8% |
令和元年度 | 39.5% |
令和2年度 | 42.5% |
危険物取扱者 甲種の各科目難易度
危険物取扱者 甲種には「危険物に関する法令」、「物理学および化学」、「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」の3科目あるんだけど、明確に難易度に差があると思う。
難易度が低い順位並べると以下。
- 物理学および化学
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法
- 危険物に関する法令
次からは、それぞれの科目についてポイントを解説していく。
物理学および化学のポイント
科目 | 合格基準 |
---|---|
物理学および化学 | 6問/10問以上 |
物理・化学は高校・大学の知識で対処可能
危険物取扱者 甲種を受ける人は理系の大学を出ている人が多いと思う。
理系の大学を出ているなら、高校生のときに物理と化学をかじっているはず。
それなら「物理学および化学」は超有利。
なぜなら、高校の基礎的な物理と化学の知識で解ける問題が出るからだ。
例えば、ボイル・シャルルの法則とか、酸塩基反応の計算とか。
はっきり言って、危険物取扱者 甲種を2か月で独学で合格しようと思ったら、「物理学および化学」にかけている勉強時間はほとんどないと言っても過言ではない。
だけど安心してほしい。
出題される問題はどれも基本的なものばかりで、うる覚えでも何とかなるし、問題演習を繰り返すうちに思い出してくるから大丈夫。
燃焼理論は超重要!
「物理学および化学」の中に「燃焼理論」という単元があるんだけど、これは超重要。
なんで燃焼理論が大事かというと、次の科目「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」で暗記の量を大幅に減らすことができるからなんだ。
しかも燃焼理論で覚えることは3つだけ。
その3つとは燃焼の3要素と呼ばれる
- 可燃物
- 酸素供給源
- 熱
だけ。
可燃物
可燃物とは文字通り燃える物。
BBQで使う木炭も可燃物だし、そこら辺の紙切れも可燃物。(木炭とか紙は危険物には分類されないけどね)
危険物でいうとガソリンとか鉄粉が代表例。
酸素供給源
燃焼には酸素が必要。
酸素が絶えたら炎は消える。
だけど熱が加わると分解して自ら酸素を発生させる物質もあって、こういう物質は消火が難しい。
熱
可燃物と酸素だけあっても燃焼しない。
燃えるには可燃物と酸素を反応させるためのエネルギーとして熱が必要。
熱が少ない(=温度が低い)状態で燃え始める物質ほど危険なのは想像しやすい。
燃焼理論を理解すれば消火理論は余裕
燃焼理論以外にも「消火理論」という単元がある。
危険物は燃えたら消すまでがセット。
とはいえ消火理論は燃焼理論を理解していれば、それほど難しくない。
消火の基本は、燃焼の3要素のどれか1つを取り除くことなんだ。
除去消火
除去消火は、燃焼の3要素のうち可燃物を取り除いて消火する方法。
窒息消火
窒息消火は、燃焼の3要素のうち酸素の供給を絶って消火する方法。
冷却消火
冷却消火は、燃焼の3要素のうち熱源を冷やして燃焼が継続しないようにする方法。
抑制消火
抑制消火は、燃焼の3要素と対応していないんだけど、可燃物の酸化反応を止めて消化する方法。
物理学および化学まとめ
「物理学および化学」は高校と大学の知識でほとんど対応できるから、この単元に勉強時間を割いてはいけない。
燃焼理論と消火理論を知っていればもう十分。
逆に高校と大学の理系の知識がないとかなり苦戦すると思う。
そのような場合はじっくり勉強した方がいい単元。
危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法のポイント
科目 | 合格基準 |
---|---|
危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法 | 15問/25問以上 |
ある程度は前提知識で対処可能
この単元も「物理学および化学」とまではいかないけど、ある程度は高校・大学の知識で対処できる。体感3割は知識と肌感覚で解ける。
例を挙げると、「炭化カルシウムと水が反応すると酸素が発生する。」みたいな選択肢があったとき、高校の化学の知識で間違いだと分かる。
炭化カルシウムと水の反応といえば、かの有名なアセチレン(C2H2)の製造方法だからだ。
さらに言うと、水と反応して可燃性のアセチレンを発生するような炭化カルシウムは当然禁水性。
湿気はNGだし、注水消火もダメ。
高校の知識だけでも、ここまで連想して解ける。
基本は燃焼理論と消火理論
「物理学および化学」で燃焼理論と消火理論が大事だという話をしたけど、ある危険物が「なぜ危険なのか」と「どうやって消火するか」は燃焼理論と消火理論がすべてと言えるからだ。
1つ1つの危険物に対して、暗記していくのではなくて、燃焼理論と消火理論をもとにグループ分けされているから、これらの理論を覚えておくだけで、暗記の負担を大幅に削減できる。
次に危険物の分類をざっくり説明する。
危険物の分類ごとのポイント
消防法では、危険物は第1類から第6類まで6種類に分類される。
- 第1類 酸化性固体
- 第2類 可燃性固体ト
- 第3類 自然発火性物質および禁水性物質
- 第4類 引火性液体
- 第5類 自己反応性物質
- 第6類 酸化性液体
第1類 酸化性固体
酸化性固体は、名前の通り酸化性をもつ固体。
過塩素酸カリウムとか過酸化ナトリウムとか、いかにも酸化性が強い物質が並ぶ。
高校化学でおなじみの過マンガン酸カリウムも第1類。
酸化性固体は燃焼の3要素で言うところの熱源になりうる。
可燃物と混ぜると可燃物を激しく酸化させて、反応熱を発するから、これが熱源となって可燃物が引火する。
さらにこいつらが厄介なのは、分子中に酸素を含有していることなんだ。
分解すると酸素が発生して、自らが酸素供給源にもなるから、窒息消火はできなくて、基本は注水消火で冷却して反応を止める。(アルカリ金属過酸化物は例外)
ポイントは自身は不燃物であること。
自分は燃えないけど、可燃物を燃やす力が強いのが第1類の危険物。
第2類 可燃性固体
可燃性固体は、名前の通り可燃性の固体。
硫黄、赤りん、金属粉とかが代表例だけど、固形アルコール、ゴムのり、ラッカーパテといった混合物も含まれる。
可燃性固体は燃焼の3要素で言うところの可燃物。
第1類危険物は、自身は燃えなかったけど、第2類危険物は自身が燃える。
比較的低い温度で着火・引火して、燃焼速度も速いから危険なんだ。
赤りんと硫黄は注水消火だけど、他はすべて窒息消火。
特に金属粉は水分と反応して、その反応熱で着火するから注水どころか湿気にも気を付けないといけない。
また第2類の危険物では粉塵爆発も重要。
赤りん、硫黄、金属粉など粉塵状のものが大気中に浮遊している状態で着火すると、激しく燃焼して爆発する。
これらを取り扱う際には喚起を十分行い、燃焼範囲の下限値未満にする必要がある。
第3類 自然発火性物質および禁水性物質
第3類は自然発火性物質と禁水性物質に分かれている。
単体のアルカリ金属、アルキルアルミニウムといった金属原子を含んだ有機物、黄りん、炭化カルシウムとかが代表例。
第3類危険物のほとんどは自然発火性と禁水性の両方を持ってるんだけど、例外が黄りんとリチウム。
黄りんは自然発火性だけで、リチウムは禁水性だけ。
第3類危険物は6種類ある危険物の中でも危険度が高くて、空気中に置いておくだけで燃えたり、水と接触しただけで燃えたりする。
だから、消火は禁水性ではない黄りん以外はすべて窒息消火。
基本は自身が燃える可燃物なんだけど、炭化カルシウムとかトリクロロシランは自身は不燃物。また、水との反応で生じる気体が可燃物という場合もある。
第4類 引火性液体
引火性液体は、名前の通り引火性の液体。
実際に引火するのは液体から出る可燃性の蒸気。
引火性と可燃性の違いだけど、引火性はある温度(引火点)になると勝手に燃え出す性質で、可燃性は自分から燃え出すことはないけど、点火されたら燃える性質のこと。
第4類危険物は、引火点に応じてさらに7種類に分類される。
品名 | 例 |
---|---|
特殊引火物 (-20℃以下※1) | ジエチルエーテル 二硫化炭素 アセトアルデヒド 酸化プロピレン |
第1石油類 (21℃未満) | ガソリン ベンゼン トルエン n-ヘキサン 酢酸エチル アセトン ピリジン ジエチルアミン |
アルコール類 (11℃~23℃程度※2) | メタノール エタノール n-プロピルアルコール イソプロピルアルコール |
第2石油類 (21℃~70℃未満) | 灯油 軽油 クロロベンゼン キシレン 酢酸 |
第3石油類 (70℃~200℃未満) | 重油 クレオソート油 アニリン ニトロベンゼン グリセリン |
第4石油類 (200℃~250℃未満) | ギヤ―油 シリンダー油 |
動植物油類 (250℃未満) | アマニ油 ヤシ油 |
※2:引火点による定義ではない
残念なお知らせだけど、引火点と各油類の代表例はすべて暗記しないといけないんだ。
詳細は専門書に譲るけど、ここでは引火点が低いものほど危険で、危険なものほど重要かつ試験に出題されやすいことを覚えておいてほしい。
引火性液体の消火方法は、その液体が水溶性が非水溶性かで異なる。
水溶性の場合は、水溶性液体用の泡消火剤(耐アルコール泡)が有効。
非水溶性の場合は、窒息消火か抑制消火が有効で、注水消火はNG。
というのも引火性液体のほとんどは液比重が1より小さい(=水より軽い)から、水に浮いて、余計に火災が広がってしまう恐れがあるんだ。
他に重要なポイントは、蒸気比重が1より大きい点と静電気を発生しやすい点。
これらはガソリンスタンドを思い浮かべると分かりやすい。
蒸気比重が1より大きいから、引火性液体から出る可燃性気体は低所に滞留しやすい性質がある。
ガソリンスタンドの天井が高いのは、風通しをよくして可燃性気体が滞留しないようにするという一面もあるんだ。
また引火性液体は水溶性のものを除いて電気の不良導体が多くて、発生した静電気が蓄積されやすい。
静電気がたまると、放電火花が発生する場合があって、これが点火源になって火災になることがあるから、静電気をためないような仕組みの配管・ホースが必要になる。
ガソリンスタンドの静電気除去パッドも静電気を逃がすために大切なんだ。ちゃんと給油前に触ってる?(笑)
第5類 自己反応性物質
自己反応性物質は、爆発や加熱分解の激しさを判断する試験で一定の性状を示す固体または液体。
有機過酸化物、硝酸エステル、ニトロ化合物が代表例。
第5類危険物はいずれも可燃性で、分子中に酸素を含むものがほとんど。
燃焼の3要素で言うところの、可燃物と酸素供給源が共存している。
燃焼速度が非常に速いのと、加熱、衝撃、摩擦で発火して爆発するから危険。
第3類危険物と違うのは、水とは反応しないってこと。
だから大量の水か泡消火剤で分解温度未満に冷却して消火する。
アジ化ナトリウムだけが例外で、注水厳禁。
こいつ自体に爆発性はないんだけど、水があると重金属と作用して、極めて爆発性の高い重金属アジ化物を作る。
また、加熱分解すると金属ナトリウムが生じて、金属ナトリウム自体が第3類の危険物で禁水性。
アジ化ナトリウムは第5類危険物の中では異色だけど重要。
第6類 酸化性液体
酸化性液体は、名前の通り酸化性をもつ液体。
第1類から第5類の危険物より種類が少なくて、過塩素酸、過酸化水素、硝酸、ハロゲン間化物だけ。
酸化性液体は燃焼の3要素で言うところの熱源になりうる。
可燃物と混ぜると可燃物を激しく酸化させて、反応熱を発するから、これが熱源となって可燃物が引火する。
基本的には第1類の酸化性固体と似た特徴。
危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法まとめ
「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」は危険物取扱者 甲種の中でも最もボリューミーな単元。
覚えることも多いけど、燃焼理論と消火理論、そして高校・大学の化学の知識で解ける問題も多いから、次に解説する「危険物に関する法令」と比べたらとっつきやすい。
基本は燃焼理論と消火理論。そして、危険物の分類ごとの特徴を理解すれば4~5割はとれる。
ここに物質ごとの細かい暗記をある程度加えれば、合格点の6割を超えることはできる。
しかもこの単元は25問もあって、10問まで間違えれるから他の2つより余裕はある。
危険物に関する法令のポイント
科目 | 合格基準 |
---|---|
危険物に関する法令 | 9問/15問以上 |
フル暗記
「物理学および化学」、「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」とは打って変わって、「危険物に関する法令」は、前提知識がほとんど通用しない。
それもそのはずで、物理とか化学は勉強してきているけど、法律は勉強してきてないからね。
しかも、理論的に解けないからフル暗記するしかないんだ。
例えば、危険物の性質の分野で水に溶けるか溶けないかは、物質を見たらある程度分かるはず。
過塩素酸カリウムは電離しそうだから水に溶けるとか、ガソリンは非極性だから水に溶けないとか。
一方で、法令に関しては「そう決まっているもの」だから、理論的でない。
とにかく暗記するしかないからつらいところ。
2か月の独学で合格するための勉強方法
とにかくインプットとアウトプットを繰り返すことが重要。
だからインプット用のテキストとアウトプット用の問題集を1冊ずつ用意するのがおすすめ。
まずは1試験解いてみる
勉強を開始したら、最初にやることは1試験試しに解いてみること。
ここではもちろん合格点をとれるわけないけど、まったく問題なくて、合格までの距離と全体像を把握することが大事。
私もそうだったけど、「物理学と化学」は思ったよりできて、この時点で6割とれる人も多いと思う。
問題なのは「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」と「危険物に関する法令」で、多分半分もできない。
それはそれで良くて、「なるほどこういう感じね」という感覚を掴めればOK。
インプットとアウトプットを繰り返しながら進める
単元を進める順番だけど、
- 物理学および化学
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法
- 危険物に関する法令
がおすすめ。
「物理学と化学」は深堀りしすぎないように、燃焼理論と消火理論を中心に軽く勉強すれば大丈夫。
その後の暗記単元に全力を注ぐ。
これらを1:4:5の割合で勉強するのが効率がいい。
勉強のコツだけど、暗記はインプット1本でいこうとする人がいるけど、大事なのはむしろアウトプット。
1単元読み終わったら、その単元の確認問題をセットでやるべき。
これを繰り返しながら最後まで進める。
1周したら試験の通しも織り交ぜる
とりあえず1周終わったら、試験の通しもやってみる。
そうすると1番最初に解いたときより、明らかに解けるようになっているはず。
とはいえ、合格点の6割には届かないだろう。
2回目が終わると、どこの暗記が不十分か見えてくると思うから、その単元を中心にインプットとアウトプットを再開する。
これらの作業を3回目4回目と重ねていく。
するとどこかのタイミングで6割とれるようになってくる。
直前期は気合で暗記
試験直前になったら、完璧に覚えられていない箇所を気合で暗記する。
おすすめは指定数量。
指定数量はほぼ確実に1問出る上、数字さえ覚えておけば解けるから直前に暗記するのがコスパいい。
2か月の独学で合格するために使ったテキスト
私が実際に2か月の独学で合格するために使ったテキストを紹介。
資格のユーキャンから出てる、テキストと予想模試。
これら2冊合わせて8回分も模擬試験が入っているからたくさんアウトプットできておすすめ。
問題集はテキストに対応しているから、間違えた問題の復習も容易。
【まとめ】危険物取扱者 甲種は2か月で合格できる
危険物取扱者 甲種は独学で2か月で勉強すれば十分合格できる。
実際に私は2か月で合格できたから、そのときにつかんだコツと勉強方法をこの記事ですべて書いたつもり。
危険物取扱者 甲種は資格の難易度的にはそれほど高くないから大丈夫。受かる。
注意点があるとすれば、危険物取扱者 甲種は電子申請できない場合が多くて、基本書類申請になるから、早めに必要書類を集める準備を始めたほうがいい。
申し込みが最難関かもしれない(笑)
申し込み方法は以下の記事で解説しているから参考にしてほしい。
TOEICで900点とったときの体験談も以下で語っているから参考にしてほしい。